映像制作 株式会社モーニング

DIRECTOR DIRECTOR

本質を見極めて余計なものを削ぎ落とす

CMプロダクション「モーニング」の映像制作技術とは

CMという決められた短い時間の中に、「いかに詰め込まないか」という事が非常に重要なんです。沢山の情報を詰め込んでしまうと家電量販店のような何でもあるよという雰囲気になってしまう。それをいかに削ぎ落として行くかが大切です。

15秒でできる事なんて、基本的には1ビジュアル・1メッセージ・1アイディア位のものですからね。それを理解した上で、そこに入るものや組み合わせを的確に判断し、15秒という時間を最大限に生かす事。それが、僕たちのプロとしての腕の見せ所なんです。

企画の段階でなにを削ぎ落とすかが消化されていれば良いのですが、制作の段階で、15秒の流れが既に決まっている状態で、後から情報を追加されるという事が多々あります。


その商品が売れるために、その商品の一番良いところを伝えてあげれば良いんですが、いろんなものをくっつければくっつけるほど、そこがぼやけて行くんですよ。だから、なるべくそうならないように、「一番良いところの情報をいかにして記憶の中に突出させるか」という事が重要な作業なんです。

日々、どんな思いで作品を作っているんですか

最終目標ではないんですが、15秒・30秒の中で「見ている人に泣いていただきたい」と思って作品を作っています。15秒という時間の中で、そこまで持って行く事ができれば、見る側も作る側も幸せですよね。それが、ある意味この業界を目指した僕の最初のきっかけなんじゃないかなと思います。

CMは短い分だけその中に凝縮されているものがあって、それが心の中に「どん」と入ってくる力が、他のものよりも強い気がしているんです。作る側も、短い分だけそこに注ぐ血の量が違うんだと思うんですよね。実際に作ってるとそんな事も感じます。

僕は明確な理由があってこの業界を目指していた訳ではなかったんですが、子どもの頃からテレビっ子だったので、好きなCMがたくさんあった事を覚えています。15秒でも心の中に残るものはあると思います。

完璧を追い求めながら作り続ける理由

今後、仕事でやってみたい事や将来の展望は

「自分が作りたくて作ったものをお客さんに買ってほしい」という願望のようなものはありますね。好きで作っているからこそ一番良いものが出来上がっているんだろうなと思いますよ。いつかやってみたい最終目的ですね、それができたらもう良いです。笑

言い換えれば、相思相愛なオファーがくれば良いという事ですよね?

そうですね。お客さんとの出会いは僕たちにとっても大切だと思います。
最善を尽くして作ったものが完成した時に、オンエアで他のいろんなテレビCMと並列で見ると、自分の作ったものが全然弱く見えたり、思っていたよりも「いけてない」事があるんですよ。そういう部分をもう少し自分が満足できるように追求して行きたいと思ってます。オンエアで見ても、自分の作品が「飛び抜けてるね」と言われるような、頭一つ抜けるような所まで行けるといいなと思います。

完璧と思って作っていても、何かやり残した事があるんだよね。でも、それがあるからまた次も作るんだと思うんですよ。そうやって永遠に作ってますね。出し惜しみしている訳では全くないんですよね。常にいっぱいいっぱいの状態ですし。

それから、今はどんなものでもやっているんですが、ゆくゆくは自分のスタイルを絞って、そこに集中して行けるようになりたいなとは思います。 具体的には、合成とかCGとかアニメとかそういう付加していくものではなく、純粋に撮影をした素材を、ただつないでいくという作品に心血を注いでみたいんですよ。ひきこまれるような人の一番いい表情だったりとか。それぞれ専門のスタッフが集まっているモーニングでなら、それも可能なんじゃないかなと思っています。



最後に、この仕事にやりがいを感じる瞬間とは

やりたいと思った企画が採用されて、全身全霊をかけてそれを撮影して、作品が出来上がった瞬間が一番嬉しいですね。

そういう作品の時は、最後の録音が終わった瞬間に、その場にいたクライアントから拍手で賞賛される事がるんです。そういうことって、本当に10年やって1回あるかないか位のことなんだけど、本当に嬉しい瞬間ですよね。

僕は、自分が頭の中で計算していたものが、狙い通りにはまることがあるんですよ、それはやっぱりこの仕事をしていて楽しい瞬間ですよね。 作りたい企画で、絵は頭の中に浮かんでいて、制作が決まればすぐに演出コンテが描ける、そういうものがトントン拍子に進むといいですよね。そんな仕事がきたときはご褒美だと思いますよね。


CMという短い時間を最大限に活かすための極意。長い年月をかけて究めてきた映像制作の真髄をさらりと語るおふたりは、カッコイイの一言でした。今なお数多くのCMを作り続ける所以、それはおふたりが常に高いクオリティを求めるプロだからなのだと強く感じた今回の対談でした。


工藤哲央

工藤哲央 TETSUO KUDOH

企画・演出

1964年9月27日 日曜日 旭川生まれ。
その朝は、水たまりに氷が張っていた。
父は元HBCの技術屋。
テレビ業界の空気の中、札幌で育った。専門学校で、デザインを学ぶも進んだ路は、やっぱりTVCMの制作会社モーニング。出来ない制作を経て、素晴しい企画演出になり、現在にいたる。

桜田威寿

桜田威寿 TAKEHISA SAKURADA

企画・演出

1973年9月11日生まれ。函館出身。 バリバリの公務員家系に育つ。
朝日プロモーション(現ADKアーツ)を経て、制作進行としてモーニング入社。
その後、企画・演出部へ。
「割と運勢は良い方だ」と思って生きています。